「ようやくお出ましかよ。待ちくたびれたぜ、ルーク。」
薄暗い洞窟を進んだ先で見つけたのは金髪の青年だった。
第十四話
「ガイ?!」
座り込んで待ち続けたガイは、俺たちの姿を発見するとスッと立ち上がった。
そして、驚きの声を上げる俺に向かって微笑んだ。
「へー、髪を切ったのか。いいじゃん。さっぱりしててさ」
「あ、あぁ」
知ってはいた。
ガイが俺を待っていてくれるって言っていたのをアッシュの中で聞いていたのだから。
けれど、本当に待っていてくれるなんて・・!!
感激で、思わずガイに飛びつきたくなったけれど、俺はピタリと脚を止めた。
俺はルークじゃないんだ・・・・
『レプリカ』
その事実が俺に重くのしかかる。
ガイは優しいからこうして待っていてくれたけれど、俺はそれに甘えてもいいのだろうか・・?
「ガイ・・・俺、ルークじゃ・・・ないから」
「いいじゃねぇか。あっちはルークって呼ばれるの嫌がってんだ。貰っちまえよ。」
「貰えって・・・おまえ、相変わらずだな」
ガイの、ガイらしい言葉に俺は思わず苦笑いをした。
そんな簡単なことじゃないって分かってるし、ガイだって分かってるはずだ。
それでもそう言って俺を励ましてくれるガイの優しさが心地良かった。。
「今更名前なんてどうでもいいだろ?せっかく待っててやったんだから、もうちょっとうれしそうな顔しろって。」
「・・・・うん。ありがとう」
心からの笑みを送ると、ガイはギョッとしたような表情でティアのほうを見た。
「!ルークが・・・ありがとう、だって・・?!」
心底驚いた、という感じのガイに俺はちょっとムカッとしたけど、今までの態度を思い出せばまぁ仕方ないかなって思って何も言わなかった。
変わりにティアが俺が変わるって言っていることを伝えてくれた。
ガイはそれに軽く目を見開いて、それからコツッと頭を軽くたたいた。
“がんばれよ”
そんな声が聞こえてきそうなその行動に、俺の目頭はまた熱くなる。
だけど、泣いてばかりはいられないからギュッと手を握り締めてこらえた。
今は何も答えない。何もいえない。
だけど、いつか俺が変われたっておもえたら、笑ってこういうんだ。
俺、変わったよ。皆のおかげで変われたよ、って。
胸張って、そう言いたい。
前とは違って、親の権力とかで威張り散らすんじゃなくて、おれ自身の力を誇りたい。
皆に認めてもらえるような、そんな人間になりたい。
「そ、ルークは頑張るんだから、ガイも頑張って女性恐怖症克服したら?」
ガイのほぼ真横に歩み寄ったに、ガイは一瞬の膠着の後その場から飛びずさった。
「ヒィィィィ!!!!」
「あなたは変わらないわね・・・・・」
ティアの呆れた声に、しょうがないだろ?!と情け無い声を返す。
はっきり言って、かなりかっこ悪い。
先ほどまでビシッと決めていたのだから、余計にそのギャップを感じた。
「っていうか君は一体だれなんだい?」
の方を向きながらガイが問いかけた。
今更といえば今更なその質問だったが、どうやらガイのところからはが丁度ティアの影に入ってしまっていたらしい。
それで隣に来るまでその存在に気づかなかったようだ。
「あそっか、ちゃんと紹介しないとわかんないよな。だよ、ガイ。」
「はぁ?」
「ルーク、それじゃぁわかんないって。・・久しぶり・・になるのかな?・です!」
にっこり笑顔で言うだったけれど、それでも説明不足だと思うわ。
何がなんだか・・・という感じのガイは、きょとんとした表情のまま私のほうを伺ってきた。
はぁ・・・コレは私が全て説明しなきゃいけないのかしら・・?
仕方なく口を開いて、今まであったことを手短に説明した。
「・・・というわけで、あの幼かったと彼女は同一人物なのよ。」
「・・なんというか・・その、なかなかにすさまじい体験をしてるんだな、も・・・」
ハハハ・・と引きつった笑みを浮かべるガイ。
あまりにも突飛すぎて、さすがの彼でもコメントのしようがないみたい。
・・・私も実際に目の前であの光景を見ていなかったら、そう簡単に納得なんてできなかったと思うもの。
話を聞かされただけではやっぱり信じられないのではないかしら。
けれど意外にガイはあっさりとその事実を受け止めた。
「どうりで言動が大人っぽいわけだよな」
そう言って笑いながら一人納得していたわ。
こうして新たにガイを加えた私たち4人は、出口に向かってまた歩き始めた。
このあと、今度は一番厄介な人にのことを説明するはめになるだなんて・・・・
まったく予想もしていなかったわ・・・・
