ナタリアとイオンがモースに軟禁された



それがしばらくぶりにあったジェイドから告げられた言葉だった。


ジェイドはガイの力を借りる為にここまで来たらしい。
一緒にいたティアと(ティアがジェイドに事情を説明済み)に対しては同じように頼ってきたけれど、ルークには冷たい態度しか返さなかった。


ほぼ無視をしつづけ、口を開けば邪魔をするなというだけ。
ルークのしたことを思えば、その態度も仕方の無いことなのかもしれないが・・・・
この非常時にまでこれではちょっと大人気ないのではないだろうか。








なにはともあれ、そんなひやひやした状態で一行はダアトへと急いだのである。














第十五話














「アニスが教団の様子を伺っているはずですが・・・」




教団の第一自治区を抜けたあたりで立ち止まると、あたりを見回しながら言った。」



その言葉をさえぎるかのように、ガイの悲鳴があがる。


ガタガタと震えながらルークの背に逃げるガイ。
そのガイのいた場所には悪戯が成功してにっこりと笑っているアニスの姿があった。






「アニス!」



突然現れた少女の姿にルークが声を上げた。
いきなり名を呼ばれたアニスも、彼の姿を認めると驚きの声を上げる。



「うわっ!アッシュ、髪切った? あ、違った、ルークか。えぇぇぇっおぼっちゃまが何でこんなところにいるの?」



アッシュかと思いきや、ユリアシティにいるはずのルークでアニスは驚きに目を見開いた。
言葉の節々にどこかつめたい雰囲気があるのは、やはり彼女がルークという存在を許せていないからだろう。






けれどすぐに真剣な表情へとかえ、ジェイドに情報を伝えるあたりさすがとしかいいようがない。
アニスの情報によれば二人は教会の地下にある信託の盾本部に連れて行かれたらしい。



「ティアには私たちを第七譜石発見の証人として本部へつれていってもらいたいのですが・・・できますか?」



まだあれが偽物だったことは本部へ報告していないため、それを理由に潜入しようというジェイド。
一同もそれに賛成だった。
他に方法もないし、なによりそれが一番確実で、安全だ。




まずは自治省へ許可をもらいにいこうと歩きだす一同を止めたのはアニスだった。





「ねぇねぇ、はどこにいるの?まだユリアシティ?それに当然のようにここにいるその人は誰なわけ?」



キョロキョロと見回しての姿を探したアニスは、見つからないことを不思議に思っていた。


ティアもルークもあがってきているのに、彼女はあのままユリアシティに残ったのか・・?

そんな疑問が浮かんできたのである。
もとよりちゃんとした身元も分からぬ少女だったけれど、自分が一番世話を焼いていた少女だったのだから、その行方が気になったのである。





「アニス、そんなことは後回しでもかまわないでしょう?」
「大佐の意地悪ー。そんなこと言ったって気になって失敗しちゃったらどうしてくれるのさー」



事情を聞いているジェイドがすっぱり切り捨てるが、アニスは納得しなかった。
ここまで駄々をこねるアニスもめずらしい・・・そう思いつつも、このままではどうにもならない。
時間が惜しいというのに・・と内心苛立ちながらも、「ガイ!手短に説明をお願いします」とガイに言いつけた。




「俺かよ!・・しょうがないなぁ・・俺も聞いた話なんだけど、実はさ・・・・」



なんとも突拍子もないことであるから、どこまではぶけば分かりやすく、かつ短時間で説明できるのか難しいところだった。
ガイ自身も説明されただけなのだから、余計に四苦八苦しながらしゃべり続けた。









「うえぇ?!それじゃぁあのがこの人ってこと?!!うそ、マジ?!」
「ごめんねーアニス。こんなハチャメチャなこととても説明できなくって、結局騙した形になっちゃって・・・」




こまごまと気を使ってくれた彼女に、実はあなたより年上なんです、なんていえるはずもなかった。
何かとお世話になっていたアニスにだからこそ、余計に罪悪感が生まれてくる。







「・・・アニスちゃん、後であまーい物が食べたいなぁ〜」
「え?・・・・うん、精一杯おごらせていただきます!」




突然甘いものが食べたいなどといいだすアニスに、一瞬何事かと考え込んでしまっただったけれど、パチンと軽くウィンクされてその意図に気がついた。


ようは「甘いものおごってくれたら許してあげよう。」ということで。
後々が気を使わなくていいように、そうやって簡単な取引を持ちかけるアニスの優しさがうれしかった。






「ほら、みんな行くよー!!」



の手を引っ張って教会のほうへ走っていくアニスに、皆は苦笑いするしかなかった。




「まったく、足を止めさせていたのは誰だと思っているんでしょうかね?」
「まぁまぁ、とりあえずこっちは一件落着で、よかったじゃないか」
「そうだな」
「そうね」






『もっとも、他の問題は山済みのようだけどな(ですけどね(ぇ))』





はぁ、と盛大にため息をついたのは、一人や二人ではなかった。