「俺・・行きたくない・・・」
ユリアシティに着いたとき、ルークが突然歩みを止めた。
第七話
皆俺が悪いっていうんだ。
きっとここでも・・・
もう、嫌だ!!
あんな冷たい眼を向けられて、それで・・
だったら・・だったら俺はここで待ってるほうがいい。
タルタロスに残っていたいんだ。
散々皆に責められて、またここでも責められるのではないかと思ったのだ。
それならいきたくなんか無い。
そう言って一人立ち止まる彼に、一人の青年が怒声を浴びせた。
「どこまでいっても屑だな!!」
「アッシュ・・」
赤髪長髪で、ルークと瓜二つの顔をしているアッシュの登場に、ルークは驚きを隠せなかった。
なぜ、なぜここに彼がいるのか。
敵のはずのアッシュが、何でこのユリアシティに普通に入ってきているのか。
けれど、驚きはそこで終わりではなかった。
「本当のことを教えてやるよ。」
ルークが知りたくて、それでも教えてもらえなかったこと。
それはとても厳しい真実。
だれもいえなかったその事実を、彼はあっさりと暴露してしまった。
「お前は俺のレプリカなんだよ!!」
「レプリカ・・・?・・嘘だ・・そんなの嘘だ!!」
だからヴァン先生は愚かなレプリカルークっていったのか・・?
でも・・・だけど!!
そんなの信じたくなんてないんだ!!
俺は、俺はルークだ。
ルーク・フォン・ファブレ・・そうだろ?
父上も、母上も、ガイも・・皆そう言ってたじゃないか!!
俺はレプリカなんかじゃない。
そんなの認めてたまるか!!
アッシュの、敵の言った言葉なんて、信じない!
武器を勢い良く引き抜いて構える。
ヴァン師匠に教えてもらったこの技で・・
俺は、ルークだってこと証明してやる!!
「はぁ――――――!!」
***
「そんな・・・」
俺はあっさりアッシュに負けてしまった。
俺よりもずっと強かった。
同じ技を使っているはずなのに、その威力は全然違った。
どれも力負けしてしまったのだ。
いつもなら何気なくティアやナタリアが治療してくれていた怪我。
だけど、一人で戦うとそんな暇なんてなかった。
グミを食べればその間にアッシュに攻撃されてしまう。
奥義だって、通用しなくて・・・
こんな、こんなのって・・・
これが、オリジナルとレプリカの差なのか・・・?
次第に失われていく意識。
最後にティアとの声が聞こえた気がした・・・
***
「ルーク・・・」
気を失ってしまったルークは、ティアの部屋に寝かされた。
傍にはミュウがいて、主人が目覚めるのをけなげに待っていた。
いつまでたっても目を覚まさないルーク。
そんな彼を見捨て、他の者達はアッシュとともに外殻大地へと戻っていった。
ジェイドもアニスも愛想が完璧に尽きていたし、ガイは多少は心引かれる思いがあったようだが、結局はしぶしぶついていった。
ナタリアはナタリアでオリジナルルーク・・アッシュに夢中である。
確かに、それも仕方ないことなのかもしれない。
彼女が待ち望んでいたルークはアッシュだったのだから。
だけど、それではルークはどうなるんだろう。
ずっと記憶を取り戻せとせっついて、散々婚約者なんだからといい続け。
実はまったく別人でした、とわかればあっさり見捨てる。
正直、今のナタリアを見ているのは辛かった。
それもあって、私は彼等についていかなかった。
アニスは特にそれに不満な顔をしたけど、上に戻っても知り合いもいなから・・とか適当に言って何とかこちらに残った。
もっとも、ナタリアの件がなくてもこちらに残るつもりではあったのだが。
私には、やらなければいけないことがあるのだから。
「オリジナルとレプリカ・・・か。」
難しい問題だ。
別にどちらも悪いわけではない。
被験者は確かに被害者ではある。
レプリカ情報を引き抜かれ、自分をもう一人作られるようなものなのだから。
だけど、レプリカも望んで生まれてきたわけではない。
誰かが・・研究者が作り出したそんざい。
彼等自身が望んでレプリカになったわけでもないのだから、こちらもまた被害者だ。
何が悪いのか。
どこで間違えてしまったのか。
ただ分かるのは、今を生きるその二つの存在を、きちんと受け止めていかなくてはいけないということ。
「ねぇルーク・・あなたはいまなにがしたい・・?」
眠っているルーク。
返答が無いことなんて分かってる。
だけど・・
自然と問いかけの言葉がでていた。
「しんじつをきいて・・・どうしたいとおもったの・・?」
ねぇ教えて。
あなたはこれからどうするの?
このままずっと眠っていれば、あなたを傷つけるものはいないでしょう。
だけど、それじゃぁ何も変わらないから。
傷つけられることも無いけど、信じてもらうこともないから。
だから・・
早く目を覚まして。
ねぇ、答えを聞かせて・・・?
