戦いたくなんかない。
でもイオン様やを苦しめたあなたを許せない!!
負けない、絶対、負けられないんだから・・!
無垢な少女と真実を知りすぎた少女
「十六夜天舞!!」
「キャー・・!!」
ドサッ
必殺技が決まってアリエッタの体が地に沈む・・・
アリエッタはすでに満身創痍で、もう立ちあがる気力もないと思う。
だけど、それでもアリエッタは立ち上がろうとした。
「もう、負けを認めてよ・・・」
思わずこぼれる言葉にルークたちも辛そうにアリエッタを見た。
こんなことしたってイオン様は喜ばない。
第一、アリエッタの守りたかったイオン様はずっとずっと前からいないんだよ・・・?
全てを打ち明けたいと思った。
でも、それはしてはいけないことなの。
今真実をしれば彼女は壊れてしまう。
あたしだって辛いけど、でもアリエッタにはもっと辛い真実だから。
これはあたしの責任でもあって、だからあたしが背負わなきゃいけない。
イオン様の優しさに甘えた結果だから。
あの人は全てに気づいていて、それでもあたしをずっと側にいさせてくれた。
あたしが裏切り者だってこともすべてひっくるめて温かく包み込んでくれた。
守る立場のあたしが逆に守られていた。
あたしは、最後の最後まで本当の意味であの人を守ることができなかった。
これはあたしに科せられた罰。
償わなくてはいけない罪の証だから・・・
「あ、アリエッタは・・・絶対負けられないんだから・・・!!」
ぐっと腕に力をこめて上半身を持ち上げる。
アリエッタの目はまっすぐにあたしを見ていた。
立ち上がらないで。
もうここで終わりにしようよ
そんな願いが生まれてくる。
でもアリエッタは無常にも立ち上がってしまった。
「なんで立ち上がっちゃうのよ・・・!!」
ぐっとトクナガを握り締める。
そして詠唱を始めるアリエッタに向かってロッドを振り下ろした。
それはトクナガへの指令だった。
「翔舞煌爆破!」
「っ・・・」
飛び上がって衝撃波を叩きつける。
アリエッタは力尽きて地面に伏した。
「痛いよぉ・・・イオン様・・・・・・」
息も絶え絶えで、それなのに必死に手を伸ばして誰かを求め続けるアリエッタ。
その切ない情景にどうしても涙が出てきてしまう。
「ごめん、ごめんね、アリエッタ!あたし・・・あたしは・・!!」
思わず駆け寄って謝罪の言葉を発していた。
本当は分かり合えるはずだった。
こんな出会い方でなかったら・・
せめて話し合うことさえできなたら
あたしたちはきっと仲良くなれた。
こんな風に涙を流して戦うんじゃなくて、一緒に笑いあうことができたのに
「アリエッタ・・・!」
伸ばされた手をつかみたいと思った
手を握って、アリエッタと向きあいたかった
でもそれはあたしの役目ではない
あたしにその資格はない。
悲しい。
最期のときにまでアリエッタに寂しい思いをさせてしまう。
それが無性に悔しくてあたしは知らず知らずのうちにこぶしを握り締めていた。
「イ オ ン・・様・・・カ ナ ミ・・・」
バサッバサッバサッ
頭上から羽ばたきの音が聞こえる。
見上げるとそこにはフレスベルグの姿があって、その背には女性が乗っていた。
その人はある程度まで高度を下げると、そのまま飛び降りた。
スタッと華麗に着地したその人はまっすぐにアリエッタのほうへとやってくる。
「だれ・・・?」
あたしの問いかけにその人はあたしの方を一瞥する。
けれど何も答えずアリエッタの手を掴んだ。
「アリエッタ、よく頑張ったね。」
優しく響くその声が意識のなくなりかけたアリエッタにも届いた。
閉じかけた目でそれでもしっかりと彼女の姿を見るアリエッタは、表情を一変させた。
「カ ナ ミ・・!ど、してここに・・・?」
「アリエッタからの手紙を読んで私もおとなしくしていられないなって思ったの。
アリエッタに会いにきたのよ」
「ごめんなさい・・・アリエッタ・・負け ちゃった・・」
「いいの・・もう十分よ、アリエッタ。イオンも私も貴女にたくさん救われてきたのよ。
だから・・・・もうゆっくりおやすみなさい。イオンが貴女を迎えてくれるわ」
微笑みを浮かべて彼女はアリエッタの頬を優しく撫でた。
アリエッタは小さく笑って・・・そのまま目を閉じた。
もうアリエッタが起きる事はない
アリエッタに刻まれた傷とと呼ばれた女性の頬から静かに流れる涙がそれを確信させた。
ごめんなさい、さようなら。
最期までその心を純白のままで旅だってしまった人
近すぎてこじれてしまったけれど、アナタはあたしにとって一番の理解者だったのかもしれないね

2007/3/27