イオン様イオン様イオン様・・・・・
あいつの口から出てくるのはその名前ばかりだった。
「いいかげんにしてよね。ボクは“イオン様”が大嫌いなんだ。」
そういったとき、あいつはいつもは下がりっぱなしの眉を珍しく吊り上げた。
「イオン様のこと悪くいわないで!!シンクのバカァ――――!!」
怒って、そうやっと怒鳴って、走り去るあいつ。
ボクにはどうすることも出来なかった。
どうすればよかったって言うのさ?
本当のことを話してしまえばよかった?
そんなこと、できるわけないだろ。
ボクが・・・ボクと今のイオンが、イオンのレプリカだなんて・・・
あいつにだけは絶対にばらしたくなかった。
知られたくなかった。
変わるのが怖かった。
ボクがボクでいられなくなるのが・・・・・・・
すっごく不本意だけど、ボクの中であいつの存在って大きいから。
ボクが唯一求めたものだから・・・
いなくなったお前。
イオンを追って、地に伏せたお前。
つかめそうで、つかめなかった手が完全に届かなくなった。
ボクの中は、もうカラッポなんだ・・・・