「イオン様をとっちゃったアニスなんて大嫌い!!」
消えてよぉー!!と叫びながら譜術の詠唱にはいったアリエッタ。
言動こそは思わず呆れてしまうようなものだったが、その譜術は侮れない。
詠唱を中断させなければ!とそれまで後衛のティア、ナタリアの守りに徹していたアニスが動いた。
「いい加減に、してよねー!!」
ブンブンとトクナガの腕を振り回しながらアリエッタに突っ込んでいった。
毎度毎度強い敵対意識を持たれて、いい加減にうんざりしているのだ。
アリエッタが導師守護役をはずされたのは別にアニスのせいではない。
どういうつもりで・・・なのかは知らないが、イオンが決めたことなのだ。
アニスがそう頼んだわけでもないのだから彼女に責任はないのだが、アリエッタはそうは思ってくれない。
アニスがイオンを変えてしまったのだと主張し続けていた。
「殺劇舞荒拳!!」
秘奥義を浴びせるとアリエッタはついに力尽きて戦闘不能状態に陥った。
厄介な譜術がなくなって多少は楽になったのか、いつの間にか魔物たちはルークたちによって倒されていた。
「こちらも終わったようですねぇ」
たいして疲れた様子もみせずに近寄ってくるジェイドにアニスは非難の声を上げた。
「手伝ってくれてもいいじゃないですかぁ〜!私一人で大変だったんですよぉー!」
「おや?真っ先にアリエッタに突っ込んでいったのはアニスではありませんか。
先に魔物を片付けてからアリエッタを・・・と思っていたら一人でアニスが倒してしまっていたんですよ?」
飄々と答えるジェイドにアニスは何も言い返せなかった。
“この人には勝てない!”
今まで以上にそう思わざるをえなくなった瞬間である。
「アリエッタ・・・」
そんな二人のやり取りとは裏腹に、イオンは悲しそうな声を出した。
視線の先には傷だらけになりながらも、ゆっくりと体を起こすアリエッタの姿があった。
ボロボロになったその姿はとても痛々しい。
「イオン様は・・・イオン様は忘れてしまったんですか・・?」
いつもみたいにアニスに突っかかるのではなく、イオンに話しかけるアリエッタ。
その表情は今までよりも悲しげだった。
「イオン様はのこと忘れてしまったんですか・・?アリエッタはイオン様とにずっと一緒にいて欲しかったのに・・!!」
ぽろぽろと涙を流しながらイオンに訴えるアリエッタ。
こんな姿はアニスも、イオンも初めて見たものだった。
予想外のその様子に、誰も何も言葉を発することが出来なかった。
そんな彼らを尻目にアリエッタはバッと片腕を上げで大きな鳥型の魔物―フレスベルグ―を呼んだ。
「アリエッタは・・・イオン様とを引き離したアニスを許しません!!」
そんな捨て台詞を残して、彼女はフレスベルグに乗って去っていった。
残された一同の頭の中に一つの疑問がめぐり続けた。
「って・・・誰だ・・・?」
ポツリとつぶやいたルークの言葉に、誰も答えることはできなかった。
