「またここに来ることになるとはね・・・・」
久しぶりに来た教会は、やっぱりあの時と変わっていなかった。
2年やそこらでこの場所が変わることはなかったのだ。
なつかしい・・・
そんな思いがうかんでくる。
けれど・・・
悲しい、寂しいともおもえるのだ。
あの人はいないのに、それでもここは何も変わらなかった。
たくさんの思い出の詰まった場所だった。
だからこそ変わらないのはうれしくも切なくもあった。
そんな風に物思いにふけっていたからだろう。
私は前方から歩いてくる人に気づかなかった。
気がついたときにはドンッと体に軽い衝撃が加わっていて、ぶつかった人が後ろに倒れていくのが見えた。
とっさに腕を掴んで引き起こし、その人の体を支えた。
怪我はないだろうか。
いかにも鍛えてなんていません、という体系だったので心配になり、声をかけようとした。
けれど、彼の顔を見たとたんぴたっと動きが止まってしまった。
イオン・・?
あの人ではないイオン。
それは分かっていたけれど、それでも重ねてみてしまう。
まるでイオンがこの場所に立っているように思えてしまう。
あのときに戻ったかのように・・・・・・・
一分、一秒・・?
きっと周りの人からみれば一瞬。
でも私には何十分にも感じられた。
思い出が、想いがあふれて止まらなかった・・・・
だけどいつまでもそうしているわけにはいかない。
必死に平静を装って、私は大丈夫ですか?とだけ声をかけた。
それが精一杯だった。
私はイオン様に存在を知られないほうがいいのだから・・
そうこうしていると守護役の少女が駆けつけてくる。
髪を高い位置で二つに結っているその子は新しい守護者。
イオン様が選んだ少女。
前までは、ああして駆けつけてくるのはアリエッタだったのに・・・・
仕方の無いことだけれど悲しかった。
その場にい続けるのはつらくて、私は半ば逃げるようにしてその場を去った。
「イオン様の進む道に幸多からんことを・・」
それがありえないことだと分かっていてもそう言わずにはいられなかった。
気づいて欲しかったのかもしれない。
あの人の・・・イオンのようになってほしくないとそう思った。
けれど、イオン様はその日短い人生を終えた・・・
何も残さず、この世界から消えていった。
守護役に裏切られて、それでもだれをも恨んだりしなかった。
7番目のイオンは、人々に希望を残して儚く消えていった・・・・・