「ねぇおいていかないでよ・・・」



だんだん手が透けてくる貴方。
それは全身に広がって、存在自体がうっすらとしてくる。



、ごめん・・・」



たった一言。
間に合わなかった私に、貴方はそんな言葉をくれた。



「まって、ねぇ!!あとちょっとで預言もなくなるのよ?!なのに・・先に行ってしまわないでよ!!」



あと少し・・あと少しで私たちの願いはかなうのに。
一番大嫌いな預言をこの世界から消してしまえるのに。
なのに貴方はいなくなってしまう。



「シンク・・!!」



シンクが口を微かに開いた。
だけど、その言葉は私に届くことはなかった。


彼の体が光に包まれて・・・すぅっと消えていった。
その場には何も残らない。
これがレプリカの末路なんだ。




なんで・・・?
どうして貴方がいなくなってしまうの・・?

私は貴方さえいればそれでよかったのに!!
私には、もうシンクしかいないのに!!

ねぇどうして・・?




「シンク・・・」



もういない貴方に、この声は届かない。



「一人に・・しないでよ・・・」



声が震える。
だけど、ぶっきらぼうに、それでいて優しく慰めてくれる貴方はもういない。



「シンク――――!!」




彼が、彼等がこちらを見ているのが分かる。
気まずそうに、ただ見ているのが。
私は涙は流さなかった。
この人達の前で、涙は見せたくなかった。







彼女は涙を決して流さなかった。
だけど、その声は震えていて。
その心は泣き叫んでいた。


空気が痛かった。
彼女の気持ちが、隠し切れないほどにあふれ出ていた。
泣いている。
彼を求めて泣いている。
だけど俺にはどうすることもできない。
だって、俺が彼を彼女から奪ってしまったのだから。


なんで、こんなことになってしまうんだろう。
なぁ、どうして分かり合えないんだ?





ふっと視界がゆがんだ。
彼女の姿が、見にくくて、頬に手を当てれば冷たい感触。



あぁ涙だ。


俺は泣いているんだ。
彼女の心につられたからなのか、それともおれ自身の想いだったのか。
彼女のかわりに、俺はただ涙を流し続けた。





俺は

私は




ただ、泣き叫ぶことしかできなかった